マウスピース矯正 雑記

カーチャン、歯の矯正をするために抜歯した。

子育てを始めてから加齢や骨折が重なり、いろんな変化があった。体型の変化、毛髪の減少、そして心境…。最近は「自分にお金をかけたい」と思うようになり、自分に似合うと選んだかりゆしウエアは2万円もした。そんな流れを受けての今回の歯列矯正である。

そもそも、歯列矯正をするかしないかの最初の選択は、かれこれ30年ほど前に遡る。

出っ歯のひよこ

30年ほど前のこと。当時小学生だったわたしは、おかんに地元の歯医者に連れて行かれた。虫歯ではなく、歯並びが悪いため、歯列矯正を検討しての来院だった。

もうあまり記憶に残っていないけれど、一通りの検査を終えた後。歯科医とわたしが部屋に残り、最後の「歯列矯正する?しない?」の意志確認の段階だったと思う。わたしは歯科医に聞いた。

わたし「治療にいくらかかりますか?」

歯科医「100万円くらいかな」

わたし「じゃあ、やめます」

わたしは、実家にお金がないことを知っていたし、次女・三女がいてこの先どうやって100万円も捻出するのか想像がつかなかった。そもそも小学生に100万円という響きは想像を絶するレベルで額が大きすぎた。

お金は大事だ。実家にお金があったなら、水泳の選手コースも続けられたかもしれないし、歯科矯正もできたかもしれない。長女が様々なあきらめる道しか選べなかった中、より酷い歯並びの次女はワイヤー矯正をし始めた。なんでやねん。

先日、実家に帰省した際、歯の矯正を始めようと思っている話をおかんにした。30年前はワイヤー矯正で当時の額で100万円スタートだったけれど、現在はマウスピース矯正というものがあり、1/3ほどの価格からスタートできるところを見つけたんだよね、と。

わたし「昔、歯科矯正に100万かかるって聞いて『じゃあやめます』って断ったことがある」

おかん「その声、聞こえてた。やめてくれて家計的には助かった」

わたし「でもずっと頭に残っていて。やりたいことは、やれるうちにやっておこうかなと思って」

おかんの軽自動車を運転しながら、30年前に歯科矯正をやめた歯科医院の前を通りがかり、そんな会話をした。

わたしは本格的な歯の矯正をしたいわけではない。ニッと笑った時に見える範囲の歯並びを、ある程度でいいから整えたいと思っている。

この「見える範囲の歯並び」を「ある程度整えたい」くらいのことができるのがマウスピース矯正だと理解している。顎のサイズに対し、1番(前歯)から8番(奥歯)までの全て32本を大改造したいわけではない。それをするには100万円コースだろうけれど、パッと見でそこそこ揃ってくれればいい。

そんなわけで先月、支払いをした。

昨日の昼休みに歯を抜いた。

健康な歯を抜くことにとても抵抗があり、最後まで、文字に起こすと歯科治療イスに座り麻酔を打たれながらも「ここでやっぱり引き返そうか」とずっと考えていた。

わたしは上顎右側4番が内側に重なってはえており、そこはスコッとわりと簡単に抜けてくれて、出血も早めに止まってくれた。これは無くなってほしい歯だったので、矯正の有無に関わらず抜いて良かったと思っている。長年いろんなところについてきてくれてありがとう。

続いて上顎左側4番に取り掛かっても、引き返そうか考えていた。健康な歯なので根っこまでしっかりしている。そんな歯を抜いてしまうのは、人類の営みに反するような気持ちが芽生えてきて、とても抵抗を感じた。そう考えていると唇がプルプルと震えてきたが、しばらくすると抜かれた。これを抜いたら前に進むしかない。

最後に下顎左側4番を抜いた。下顎に人工的で不自然な力をかけ、左右に揺らしながら抜く。とても嫌な気持ちになった。もし、この世に人間を創出した神様がいるのなら、その思し召に反することをしているのではないか。歯並びなんて整えなくてもそこそこ生きていけるのだから、こんなに嫌な気持ちになりながら抜かなくてもいいのでは。最後まで自分に問いかけていた。うっすらと痛みが走ったため麻酔を追加してもらい、最後はスポンと抜かれた。

抜歯後、上顎右側4番の出血は割とすぐに治まったけれど、左側の上下4番からは出血が続いた。歯を抜いた翌日まで血が止まらないのはふつうらしい。口の中はずっと血の味がして、抜歯後はお昼ごはんも夜ごはんも食べる気にならなかった。もちろんビールも飲んでいない。

麻酔が切れる前に痛み止めと抗生剤を飲んだので、歯を抜いた後の痛みは特に感じていない。ただただ血が止まらず、口の中が気持ち悪い。

そんな感じで、歯を抜いたあとローテンションの矯正スタートとなった。これから1年半近くのマウスピース矯正が始まる。歯並びを整え終えるまで不便なこともあると思うけれど、30年抱えていたコンプレックスを解き放つため、前に進むしかないのだ。歯を抜いてしまった以上、やるしかない。

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