5年生存率を上げるブログ わたしとスキルス胃がん 雑記

12月5日、正午過ぎのこと。チバユウスケを想う。

12月5日。それは、わたしが病気休暇から職場復帰して3営業日目のことだった。

お昼休憩に入り、買い出しに行こうと準備する直前に、TwitterもといXでチバユウスケの訃報を目にした。

ウソだろ、ウソであってくれよ。チバさんは、カッコよくシレッとステージに戻ってくると信じていた。なのに、何故。

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3月。

それは、それぞれの推しミュージシャンを持つ女子3人で飲んだ時の話。推しの写真を眺めながら、どんなところがかっこいいのか共有しあっていた。クラフトビールを片手に、幸せで尊い時間が楽しかった。

ここ最近のチバユウスケの姿をまじまじと眺めたのは、おそらく20年ぶりだったかもしれない。圧倒的に悪っるそうで、シブくてイケてて、めちゃくちゃかっこいいロックンローラーに、わたしは一瞬で目を奪われた。それは当然だった。

この背中を追っかける後輩ミュージシャンが多数いるだろうことは、誰に聞かずとも容易に想像できる。それくらいシブくて、イケてて、とにかくカッコイイ。圧倒的な存在感だ。

それから何日か経ち、わたしは近所の胃腸内科に経鼻内視鏡の予約をした。胃カメラの日は清々しい天気で、春を思わせた。この日に採取した細胞を生検にまわし、わたしは胃がんと診断された。チバユウスケのイケオジっぷりに驚愕してから、わずか3週間後のことだった。

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手術先の病院に転院し、4月20日に胃全摘の手術を受けた。術後は起き上がるのも億劫で、スマホを触る元気が戻ったのは手術から4日経過した4月24日だった。超ネガティブ思考なわたしは、この世に生きて生還できるかわからないからと、手術を家族と仕事関係者、そして子ども関係者にしか伝えていなかった。それで生還を確信した24日、身近な友達に「胃がんで手術し、いまは入院中」と連絡を回したのだった。

4月24日。

その日は、偶然にもチバユウスケの食道がんが公表された日でもあった。

3月に飲みながら推し話をしたチバユウスケファンのMちゃんには、ダブルで衝撃を与えてしまった。本当に申し訳ない。わたしは翌日になって初めてチバユウスケの件を知ったので、早朝にMちゃんに謝罪のLINEを送った。

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チバユウスケの食道がんを知ってから、わたしは彼の病状が気になり、検索するようになる。4月24日の公式発表以降、チバユウスケの病状にまつわる情報は、まったく拾えなかった。わたしが情弱なのかもしれないし、バンドや事務所が厳戒態勢を敷いたのかもしれない。

チバユウスケはギターボーカルだ。もし声帯近くに食道がんが広がっていた場合、食道とともに咽頭の切除が考えられる。彼の歌声は唯一無二だから、どうか病状が軽く、そして声帯に影響のないことを心から願った。おそらく、彼のファン全員がそう祈っていただろう。

とはいえ4月24日以降、一切の公式発表がなかった。それが逆に恐ろしかった。「もしかすると芳しくないのかもしれない…」。同時期から「勝手に」一緒に闘病していると思い込んでいるわたしは、一切出されない公式情報に、一抹の不安を抱えた。それでも「良い情報が出ているのでは」と期待し、検索を繰り返した。わたしが彼の情報を最後に探したのは、11月末だった。

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12月5日。

冒頭の通り、「チバユウスケに関しての大切なご報告」という公式情報が流れてきた。11月26日に逝去した、と。

ウソだろ。勘弁してくれ。外の世界に連れて行ってくれるな。4月の発表からわずか7ヶ月じゃないか。あれこれ混乱しながら、チバユウスケファンのMちゃんにLINEを飛ばした。

気持ちの整理をしなければ、午後の仕事が手につかないと思い、こんなツイートを投稿した。長すぎて全文表示されないので、こちらにコピペを掲載する。

チバユウスケの訃報に、安全運転できそうにないので昼休みの買い物はやめた。 #スキルス胃がん #食道がん #がんサバイバー

胃全摘の手術を終えた4日後の4月24日。わたしは身の回りの友人に「実は胃がんで胃全摘して入院してる」と連絡を回してた。偶然にもこの日、チバユウスケ食道がんで活休の公式リリースがあって、わたしは「チバさん一緒に頑張ろうね」って思ったんです。

その後もチバさんが気になって、定期的に病状を伝えるお知らせが無いか調べてた。手術したのかな。抗がん剤治療してるかな。わたしと同じように副作用で苦しんでないかな。回復して復帰ライブとかやってくれるかな。食道がんだから発声に影響あるのかな。チバユウスケなら乗り越えてくれるだろうな。早く良い知らせが出ないかなぁと期待しながら。

春先、女子トークが弾み、チバユウスケファンの友達から、ここ数年の彼の写真を見せてもらった。ちょい悪でいかにもロッカーな風情が超カッコイイ、そんなイケオジになっていました。この話で盛り上がったのはつい最近、今年3月のこと。

その直後にわたしはスキルス胃がんを告知されて手術し、チバユウスケ食道がんのお知らせを見て「なんてタイミングだよ。でもチバさん、一緒に治療を頑張ってこ」という気持ちで、勝手に支えられてた。ほんと、ずっとそういう気持ちでいたんです。なのに病魔はなぜ彼を、有能なアーティストたちを奪ってしまうのか。無能なわたしはまだ生きているのに。やめてくれよ、ほんっと頼むよ。

今年に限って多くのミュージシャンがなぜ亡くなるのか。それは、シロウトなりになんとなく思う節があります。有名人が亡くなるとニュースになり目立つけれど、おそらく、それ以上に多くの一般患者も亡くなられているのでは?と思うのです。

というのも。わたしの主治医はたびたび
「コロナ禍で検診を控えたり、調子が悪くてもご自宅で我慢されてらした方が多い。やっと病院に来ても、進行して治療できないケースが本当に多い」
と話していて。それはまるでボヤいているような、外科医として悔しさがにじむような、そんなご様子で...

この話を耳にしているので、もしかすると一般人だけでなく有名人にもそのようなコロナの影響があったりするのかもしれないなぁ、と思うわけです。事実関係はこのさき専門家が正確に分析してくれるでしょうけれど、それって振り返らなければわからないことでしょうから。いまを生きる人間としては、やはり
ーーーーー
・推しは推せるときに推せ
・多忙でも不調があったら今すぐ検査に行こう
・早期発見、早期治療が大事
ーーーーー
に尽きると思うのです。
この長文を目にした方、どうかこの3つだけ覚えてください。

チバユウスケの訃報に悔しくなり「なんでだよ!」と泣いてしまった。HEATHや櫻井あっちゃん以上にショックを受けているのは、上記のような色々を思い浮かべたからです。

チバユウスケといういかにもロックンローラーな存在が、この世にいなくなってしまった悔しさ。それをわたしの推しに重ねると、一種の焦りや不安が無限に膨らんでいく。二度と推しに会えない。ライブを見られない。そんなの、考えらないし考えたくもない…

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後日、Mちゃんに会った際、可能な限りで話を聞かせてもらった。訃報を知ってから、「チバさんの音楽を聞けないほどショックを受けている」と聞いた。わたしが同じ境遇だったら、どうするだろう。どうなってしまうのだろう… 正直、正常な精神状態を保つのが厳しいだろう。それくらい、わたしは推しの音楽に依存して生きている。

2023年は大腸がんで亡くなったHEATHを始め、病気や急死したアーティストのニュースを何人も見てきた。けれど、チバさんの訃報は聞きたくなかった。4月24日の発表からずっと一緒に闘病してきたと「勝手に」思っていたから。彼はシレッとステージに戻ってくると「勝手に」願っていたから。

生粋のファンの心境を想像する。THEE MICHELLE GUN ELEPHANTのゲット・アップ・ルーシーとスモーキン・ビリーくらいしか知らず、ROSSOやThe Birthdayに詳しくないわたしでさえ、深い海に沈み込んだ。だから、様々な音楽に支えられて生きてきたわたしには、ファンの方々の気持ちを考えると「虚無感」という言葉しか思い浮かばない。

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食道がんは初期の自覚症状がほとんどなく、内視鏡(胃カメラ)での発見が主だそう。がんが進行すると胸の辺りに違和感が出たり、食べ飲みがつかえたりするのだそう。食道がんの原因はお酒とタバコなどで、男性に発生しやすいと聞く。(参照:国立がん研究センター

経済評論家の山崎元さんは食道がんステージⅢで、食道と胃の一部を切除した。山崎さんはウイスキーが好きで、

「山崎さんの飲み方では、胃の中では水割りだけど、食道ではストレートですね」という友人の言葉から、事情を察してくれるとありがたい。(引用元

という表現から、おそらくウイスキーをストレートで飲みながら、サイドにチェイサーを用意するスタイルだったと推測する。わたし的には、アルコール度数の強いお酒や、熱過ぎる食事など、そういった刺激が積み重なると食道がんに発展しやすいんだろうなと理解した。

胃腸内科医の友人と会った際に食道がんについて聞いたところ、初期段階では自覚症状がないものの、胃カメラで見つけやすい病気で、胃カメラ時に細胞を採取し、生検で診断が可能という。だから内視鏡での定期検査はしたほうがいい。そんな話だった。

お酒を飲む、タバコを吸う。そんな趣向を持つ方は、健康診断・人間ドック以外でも自主的に検査しても良いかもしれない。ちなみにわたしはお酒が好きなので、定期的に胃カメラをしたい。胃全摘してるから、胃カメラっていえないかもだけど。

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2023年は本当に死神に呪われた一年で、わたしの心に影を落とした。チバさんと同じ時期に闘病を始めたわたしは、周囲の助けを借りて、今日もこうして生かされている。だからこそ、残された側の我々の「勤め」とは何かを問う。

がんサバイバーのわたしは、先のツイートに含めたこの3点を、どこかの誰かに届け続けねばと考えた。

  • 推しは推せるときに推せ
  • 多忙でも不調があったら今すぐ検査に行こう
  • 早期発見、早期治療が大事

推しも自分もこの先の保証なんてない。だから、推しは推せる時に推さねばならない。推さずに一生後悔するなんて、わたしは絶対にイヤだ。推し続けるためには、健康であり続けるのも重要だ。万が一病気が見つかったら、最短で治療に入り、体の自由が効く限りどうにかして推し続ける工夫をしたい。

スキルス胃がん pステージⅢAと診断されたわたしは、それらを体現したい。投薬と推し活を並行し、病気でも楽しく生きる姿を通じて、上記3点を地道に啓蒙していきたい。それで救われる方がひとりでも現れたなら、わたしとしては心からホッとするだろう。

そういう人を少しでも増やしたい。個人の力ではどうにもならないので、発信力のあるメディアを巻き込みたいからこその取材を受けたり、寄稿したりなのだ。健康体では興味を持たない話なのは、自分が健康だった当時を振り返ると仕方ないと思う。それでも1%でも目にしてくれる人がいるならば、わたしは管理画面に文字を打ち込まねばと感じるのだ。

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ユッキー

北海道出身の沖縄移住ブロガー。食べ飲み歩きブログ「毎日ビール.jp」や、雑記ブログ「毎日ノンアル.net」を運営中。1匹&1児のカーチャン。2023年からスキルス胃がんサバイバーとして「5年生存率を上げるブログ」を開始。

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