先日、スキルス胃がんで胃全摘したユッキーです。
5年生存率を上げるブログ内の「わたしとスキルス胃がん」では42歳でスキルス胃がんになり、胃全摘したわたしが感じたこと、考えたことなどを記録していきます。今回は手術を受けるにあたってのスピード感に驚きつつも、病気発見の早さと治療開始の素早さが重要なのだと気付いたお話です。
検診や再検査に行かない言い訳 10選
スキルス胃がんとわかり、たくさんの方に助けてもらって命を繋げられたわたしから、読者の方へひとつ投げかけたいことがあります。みなさんの中に、こんなことを考えたり言ったりした経験のある人はいませんか。
- 仕事や家庭が忙しくて病院に行く時間がない
- 健康診断や人間ドックで何度も「要検査」が出てるのにスルーしてる
- 自営業やフリーランスだから健診や病院に行けない
- 健康不安はあっても資金的な理由で後回しにしてる
- 再検査の通知なんて、すっかり忘れてた
- 「自分は大丈夫」という根拠のない自信がある
- 健康診断なんて一度も行ったことがない
- 健診が始まる前の若年層だし、受診しなくてもまだ大丈夫
- ピロリ菌検査でひっかかったけど長年放置している
- 「今年こそ検査に行く」と言いつつ365日が過ぎた
これらは、5年生存率を上げるブログを開始してから耳にした、健診や再検査、受診をしていない理由です。手元に届いた内容はさまざまですが、だいたい10個くらいにまとめられそうです。どれを読んでもなんとなくわかるし、わたし自身も身に覚えがあったりします。
ですが、ガンサバイバーになってしまった立場からすると、どれも「自分が行きたくないだけ」を正当化している言い訳に聞こえてしまうんですよね。。。
お話を伺ったり送られてきたDMを眺めては、内心では「いやいや、そんな言い訳どうでもいいから、さっさと病院に行こう!」って思っていたりします。ほんとすみません、だけど、どうか最短のスケジュールで健診・再検査・受診をしてください。もしスキルス胃がんだった場合、もしくはそれ以外の病気であった時でも、初手のタイミングやスピード感が重要だと経験したからこそ、そう伝えたいのです。
半年遅ければわたしは死んでいた、かも
スキルス胃がんはもちろん、他のがんも発見が遅れると他の臓器に転移して死亡する確率が高まります。それはわたしも無縁の話ではありません。
もしあの時、自発的に胃カメラ検査に行っていなければ、もし経験豊富な内視鏡医のクリニックで検査していなければ、今もスキルス胃がんとわからずに過ごしていたに違いありません。だって血液検査はどの項目も問題なかったし、半年前の健康診断でも再検査はなかったのですから。そうして発見されずに病状だけは進み、急激に体調を崩して、半年後には手遅れになっていたと考えると… なんとも恐怖を感じます。
わたしの場合、命を繋ぐスタートラインは初手でした。
初手といってもとっても単純で、ほんと「最近ごはん食べられないし、ちょっとずつ体重が減ってるから、一回病院行っておこうかな〜」という気軽なものでした。誰に言われたわけでもないのですが、わたしにしては珍しく自発的に病院のドアをノックしただけです。
でも、確かにこれは「珍しかった」んですよね。病院なんてそうそう行かないし、まさか自分ががんに侵されているとも思っていなかった。それでも珍しい行動を取ったのは、まわりからの影響や置かれている立場などいくつか理由があって、それでこの時ばかりは受診しておきたかったのです。結果的に運がよかったし、命を繋いでもらったと感謝しています。
もし受診していなければ、進行の早いスキルス胃がんにどんどん侵され、他臓器へ転移し、手の施しようがなくてあっという間に死んでいたでしょう。自分の経験を通し、病気に対する発見・治療のスピード感は本当に大事だと実感したので、それをブログやSNSで発信をしていきたいです。
なかなか理解されにくい、早期発見の重要性
だけど、もどかしいのです。「自分は健康だと思っている人」にはわたしの声は刺さらないのですから。
かつて、自分がそうであったように、人間はみな、自分が病気だと思って生きていません。なので闘病記や啓蒙ブログを発信しても、健康な人には本当の意味で刺さりにくいのです。
この手のジャンルを熱心に読み込むのは、おそらく、同じ境遇の闘病中の患者本人もしくはご家族や仲の良いお友達あたり、そして病気が見つかったばかりで不安を抱えている方といったあたりでしょう。健康体にとっては興味・関心の薄い話題ですから、右から左に流れてしまって、ほとんど刺さらない。これが現実と理解しています。
入院先でもいろんなお話を伺いながら、「医療従事者的にも、健診率・再検査率・受診率の低さがどかしいと感じているだろうな」と思いました。特にコロナ禍を経た今は顕著でしょう。いろんなWEBメディアを見ていても、
がんを早期に見つける利点は大きい。第一に早期がんは治る確率が高い。
だとか、
例えばがんのような重大疾患は、1年でも発見が遅れると病気が進行して取り返しのつかないことになりかねない。
情報参考元:コロナによる検診控えでがんが進行 腎臓部分切除が全摘になった患者も 治療医からの影響の声(AERA dot.)
と言われていて、どう考えても早期に病を見つけることが大事なわけです。これはコロナ禍は関係なしの大前提です。早く見つかれば見つかっただけ治療が良い方に運ぶはず。
それを踏まえつつの、冒頭に置いた「健康診断に行かない言い訳 10選」を改めてご覧になってください。いま受診すれば助かるはずなのに、いま治療できれば完治するかもしれないのに、それでも人間というものは自分の行かない理由を正当化するわけです。これが本当に難しくって。がんサバイバーのわたしでも、正解が見つかりません。
どう生きるかなんてものは、シンプルに自己責任です。病気を発見するのもしないのも、早期発見で治療完治できるのもできないのも、手遅れになって死ぬのも、結局のところは行かない理由を正当化している自分自身にかかっている。そこには他人は介入できません。がん経験者のわたしが早期発見・早期治療と言っても、結局はあなたの自己責任です。
この話を100人に伝えて、100人がわかってくれるはずなんてありえません。だけど、1%でもいい。どこか誰かの気付きになるといいなと淡い期待を寄せながら、この記事も他の記事も書いています。
治療開始のスピード感も大事なポイント
以前、手術日の提示をされた時にシビれた話を書きましたが、振り返ると、このスピード感にも命を繋いでもらいました。友愛医療センターに転院し、初診からわずか9日後には手術という猛烈なスピード感です。大きな病院でこんなことあるんだ?!と驚いたし、主治医の情熱と意気込みを感じました。同時にスキルス胃がんへの楽観視は間違っているとも理解しました。
スキルス胃がんは進行の早いがんで、症状が悪化してから腹膜播種と共に発見されることが多いそうです。これは腹膜への転移であり、開腹して腹膜播種を確認されると、基本的には胃の切除は行わず、お腹をそっ閉じして抗がん剤治療に切り替えるのだそう。
わたしの主治医は、一刻も早く開腹手術で病巣・胃を切除しようと調整をしてくださいました。これは、もし仮にまだ腹膜播種を起こしていないなら、悪いものはいち早く取り除く狙いも含んでいたものと思います。腹膜播種はCT検査や血液検査ではわからないため、実際に開腹するまでどちらに転ぶかわかりませんでした。
結果的には腹膜播種は確認されず、腹水洗浄細胞診も陰性だったと聞いています。お腹の中の病気の進行具合はわかりませんから、もし手術が1週間、1ヶ月遅れていたら、わたしは腹膜や他臓器への転移をしていたでしょうし、残された人生が短いものになっていたかもしれません。
1週間、1ヶ月なんてあっという間です。もしもの時に最短ルートで治療にあたることがいかに大事か。身に染みてイヤというほどよくよく理解しました。だから伝えねばならないのが、病気発見と治療開始のスピード感です。悠長なことは言っていられないので、早く見つけ、早く治療を開始して欲しいなと思います。
生かされたからこそ、あなたに伝えたい
今回の記事は、ちょっと反感を買う部分がある内容かも…と思いながら書き綴りました。もしこの記事を読んでイラッとしたならば、それはつまり、あなたのどこかに後ろめたさがあるのではないかと思うのです。
無論、わたしも若い頃は病院なんて行く時間ない・再検査なんて別にいいやと思っていた人間ですし、家庭や仕事の折り合いをつけて通院する大変さ・面倒臭さも理解しています。検査も受診もタダではなく、お金もかかります。そして検診に行かない・受診しない皆さんひとりひとりの環境もさまざまでしょうし、いろんな理由があることも想像できます。
そうはいっても、いろんな方に助けられて命を繋いでもらったわたしです。この立場になると「そっかー、じゃあ仕方ないねー」では済まされない話なんですよね。だって、みんな、まだ死にたくないでしょ?やることあるから死ねないでしょ?守るものがあるなら、余計に生きたいでしょ?それならどうして、自分の健康状態を理解しようとしないのですか…?
最初の一歩を踏み出すのは、あなた自身の他にいません。受診して何もなければそれでOKじゃないですか、その先もしばらく安心なはずです。もし何か見つかったとしても早めの発見なら対処法があるでしょうし、どうか手遅れになる前に自分の健康を優先してください。
胃は失ったけれど、わたしは食べ飲みのリハビリを続けて生きています。スキルス胃がんに関わらず、早く見つけ、早く治療することで可能性はまだまだ広げられるはずです。やりたいこと・守りたいものがあるならばなおのこと、どうか健診・再検査・受診をしてください。月並みな表現ではありますが「健康に勝る幸福なし」です。
終わり。