先日、スキルス胃がんで胃全摘したユッキーです。
5年生存率を上げるブログ内の「わたしとスキルス胃がん」では42歳でスキルス胃がんになり、入院・手術・術後の抗がん剤治療をする中で思ったことをまとめています。今回は、術後補助化学療法を受けているわたしが、闘病をする中で心の支えにしている推し活について書いてみました。飛行機に乗ってヘビメタ遠征したのですが、ライブ会場に着いた瞬間、号泣したよね。「ここに戻って来れたー!」って。
この一年、いろいろあった。
子育てと仕事をしていると、年々自分の時間が減っていく実感があります。我が家はひとりっ子ですが、二人三人と育児しているご家庭のお父さんお母さんたちって自分時間あるのかな…と思ったりして。今も二人目が欲しかったな、とも思うし、自分時間を欲するわたしには二人目は無理だったな、とも思うし、いたらいたでなんとかなったんだろうな、とも思うわけですけれども、現実はひとりですし、年齢や抗がん剤治療中ということを踏まえると、もう妊娠・出産の機会は無いと頭で理解しているスキルス胃がん患者です。
閑話休題。
先月のことですけれども、9月はわたしの生まれ月でした。
この1年で、生き方も生活も体型も大きく変わっちゃったなぁ。急にやってきた想定外の病気診断、入院・手術、抗がん剤治療の開始… この記事を書いている時点で、昨年と比べると体重は14kgほど落ちました。幼児ひとり分、どこに消えたんだよ。
体重が大きく減るのは、だいたい点滴の抗がん剤を打ったあとの副作用期間です。においに敏感で食事できない、食べる気になれない、動けず横になってばかり。そんな時に体重が激減し、そのままそれをキープしちゃっています。回復後に食べても増えないっていうことから想像するに、抗がん剤の体へのダメージってのは相当ですね。毒って呼ばれるくらいだからね、毎回「ウヘェー('A`)」って感じ。
病というのは嵐のように急にやってくるし、宝くじに当たるようなものだし、予見できず避けようもないなぁって、つくづく。原発も再発も運次第だっていまは思います。
推し活計画するがん患者
点滴の抗がん剤(ドセタキセル)を試した6月。当時、加入している推しのファンクラブからメールが届きました。そこには、3ヶ月後に大きなライブハウスでワンマン公演があると書かれていました。3ヶ月後、つまり9月のライブに行けるかどうかもわかっていませんでした。ですが、チケット代を無駄にしてもいいから、この月に大きなニンジンをぶら下げておきたいな〜と考えました。
ライブをご褒美として不慣れな社会生活を続けるというのは、わたしが昔からよくやってきたことです。けれども今回はこれまで以上に意味合いが深いように思います。「死にたい」と検索するくらいしんどかった抗がん剤点滴の副作用を乗り越えられたのは、周りからのエールのおかげでもあるし、推しの存在にも支えられていたと振り返ります。
もちろん具体的に推しが何かしてくれたとかはないんだけど、そこに存在していること、SNSを通じて活動を眺められたこと、そして9月のワンマンライブに行くのだ!という目標があったことは、やっぱ強かったはずです。
思えば、私の人生は推しとともにあるわけです。
東京時代。上司と相性が悪く、品川駅で降りて高輪台の坂道を登りながら、いつもHEAVY METAL THUNDERを聴いていました。この曲はわたしにとって偉大な応援ソングです。「もやしのお前にはこいつがいるのさ/軟弱な身体には棘と鎖を」という歌詞が刺さって、泣きつつも頑張って出社していたんですよね。壮大な物語が始まるようなツインギターのイントロもいい。落ち込んでる時、鼓舞する時、テンションが上がっている時。いつ聴いてもシビれます。
…という推し曲をさしこみつつ、丸っと22年、23年目に入った追っかけ人生ですけれども、やっぱり彼らの存在なくして、いまのわたしはないわけです。社会人として、カーチャンとして、闘病中のがんサバイバーとして、どこを切り取ってもSEX MACHINEGUNSはなくてはならない存在です。わたしという人間が生きていく上で欠かせないパーツ、かつ、依存先のひとつです。
そんな彼らのワンマンライブがあるなら、3ヶ月先の行けるか行けないかもわからないライブチケットの予約は必須だったし、万一いけずにチケットを流してしまっても、彼らの収益になるなら別にそれでいいと思ってFC先行で申し込みました。トーチャンはヘビメタ is 精神安定剤と理解してくれているようで、誕生日プレゼントとして「ヘビメタ遠征の時間」をくれました。ヲタク趣味に理解を示してくれるの、最高にありがたいなって思います。
リスクはある。でも推しに会いたい。
チケット購入から誕生月までの間に、わたしの頭髪はゴッソリ抜け落ち、野球部員的な頭になりました。体重も体力も落ち、スタンディングライブで2〜3時間立っていられるんだろうか?という不安もよぎりました。そもそも胃全摘後に飛行機に乗って、具合悪くなったりしないのか?都会で流行病(コロナとかインフルとか)をもらったりしないか?など、いろいろ心配ではありました。そんなリスクを取ってでも、推しに会いたかったんです。わたしの生きがいだから。
幸い、抗がん剤治療の合間の休薬期間とヘビメタ遠征の期間がドンピシャで合いました。病院と調整が必要なこともありましたが、なんとかなりました。9月に受けた抗がん剤点滴による副作用も出発までには収まったし、血液検査も状態が良く、免疫機能も安定していました。細胞レベルでライブに行こうとしてんじゃん!笑
那覇空港から羽田に飛び、蒲田宿泊で川崎のクラブチッタへ向かいました。体力が落ちているのは身をもって理解しているので、今回は無理せず、疲れたら後ろに下がると決めていました。が、入場からライブ終わりまでの3時間半、ずーっと突っ立っていられたんですよね。きっとアドレナリン垂れ流しだったんだろうなー。坊主なのでヘドバンも封印していたけど、ほんとは頭振りたかったよー。ワイの毛根、頑張って育毛してくれー。
ヘビメタ遠征中は、蒲田・川崎グルメを堪能しました。食べ過ぎでお腹ピーピーになってしまい、そこんとこは内臓各位に深くお詫び申し上げたい。あれは申し訳なかった、次の遠征時は気をつけます。一方で、おまいらも体の主の意向に添えるよう、引き続きいろいろ調整してほしい。頓服もゲットしておくからさ、夜中から水下痢10回とかなるべく避けようぜ。
メンタル、ととのえてこ。
そんなわけで、この記事で何を言いたいかというと、病気を抱えても楽しみを我慢する・失う必要はないってことです。もちろん以前とは体が異なりますから、どこかで制御は必要です。が、それでも自分の好きなこと・趣味を諦める必要はないのです。できる範囲、やれる範囲で楽しみを維持しつつ、それを糧に前に進みましょうよ、とわたしは思います。
飛行機に乗って遠征するような、大きなニンジンじゃなくてもいい。毎日ちょこっとの小さなニンジンでいいのです。わたしは推しのSNSやライブ配信というニンジンでパワーをもらっているし、もちろん、ライブ遠征のような大きなニンジンに参戦することで、目の前で繰り広げられるステージングや爆音・音圧・瞬間瞬間のキラキラした表情を拝み、「生きて、彼らに咲き続けたい」とヲタ心をくすぐられました。ととのうって、こういうことじゃないんですかね。
好きなこと・好きなものはいくつあってもいいのです。依存先を分散することでメンタルが安定し、健全でパワフルにととのうはずです。わたしにはその実感があります。闘病は自分で乗り越えなければいけません。43歳のわたしには推したいものがいくつもあります。日々の愚痴や体調不良はSNS上で吐くかもしれないけれど、心の底からヘコたれてる時間はないのです。だっていろいろなものを推したいからね。推しは推せる時に推せ。推し活こそすべて。
そう思いながらも、ヘビメタ遠征帰りの機内で空弁を食道に詰まらせて「胃全摘、キッツー」と思いました。くっそー。推しがいる限り、オラ負けねえぞ!