2023年4月にスキルス胃がんで胃全摘したユッキーです。
病気が見つかったのは2023年3月、手術は2023年4月、抗がん剤治療を開始したのが2023年5月。まもなく1年を迎えます。抗がん剤治療の副作用で倒れ込む日々があったり、治療方針が確定し、時短勤務で復職したり。あっという間の1年でしたが、その間ずっと仕事のことでモヤモヤと葛藤を抱えてきました。
今回はそんなお話について。心の整理のために書き出したいと思います。
「闘病」と「葛藤」に揺さぶられた昨年度を振り返る
桜舞い散る4月、新年度を迎えました。今朝、お子サマーの通学路を移動しながら「去年のいまごろ、何を考えてたかな」と振り返りました。冒頭の通り、2023年3〜4月はスキルス胃がんの発見と手術があり、さらにはお子サマーの卒園・小学校入学も重なって、とても慌ただしかったように記憶しています。
ドタバタしていたけれど、主治医がゴリゴリと手術日調整をしてくださったおかげで、いまこうして生きられています。あらためて、友愛医療センターの主治医 二宮基樹先生をはじめ、いろいろと相談に乗ってくださる胃腸内科医のラードク、医療関係者の皆さん、本当にありがとうございます。
これまで病人視点で一連の流れを書き綴ってきました。でも人間というのは一役だけでなく、複数のキャラクターを持っているはずです。わたしはスキルス胃がんのがんサバイバー、グルメブロガー、カーチャン、20年以上SEX MACHINEGUNSを推しているマシンガー、そして社会人としての顔があります。この他にもあるかもしれません。これらが複合的に混ざり合ったのが「わたし」という人間です。
その中で、今回は社会人たるわたしについて、公にできそうな範疇で切り出してみたいと思います。
病気発覚まで担当していたお仕事のこと
2023年3月に病気が見つかるまでは、年単位で動いている案件に事業伴走という形でJOINしていました。
手探り状態の案件立ち上げから参加させていただき、形にして世の中にリリースし、安定的に運用をする。時には外部との調整があったり、協力者にお声がけしてJOINしてもらったり。稼働100%で取り組んでいました。
もうちょっとわかりやすく書くと、コンテンツディレクターという立ち場で、クライアント先に常駐していました。難しいこともあったけれど、とにかく毎日が楽しくって!前職やブログで得たSEO、サイト構築&運用、集客、SNS運用、広告運用の知見などが見事にハマり、毎日あっという間に業務時間が過ぎていきました。
いま振り返っても、めちゃくちゃ性に合っていた案件だったなぁ。アサインいただけたこと、そしてクライアントの皆さんにも相当良くしていただけたことは、深く深く感謝しています。
そんな最中、事態が大きく変わる出来事がふたつ起こりました。
ひとつは、わたしがスキルス胃がんに蝕まれていたこと。
もうひとつは、勤め先都合で案件からの撤退が決まったこと。
これにはかなり落胆したし、運命の神様はこんなに衝撃的なことを重ねなくてもいいのに…とも思いました。
治療で休職していた期間
スキルス胃がんとわかった後、入院・手術に向けての通院や転院をしていきました。
同時に、案件から撤退するにあたって、クライアント向けにマニュアル作成をしたような気がするし、案件終了日前に入院が必要になったため業務整理や社内での調整もしたような気がします。このあたり、バタついてあんまり記憶がないんだな…
さらには仕事と病院の合間を縫ってヘビメタ遠征もしたなぁ。ビールイベントにも行けたし、アメリカのお友達や前職の同期とも飲めたなぁ。いろいろとヤケクソだったのかも。笑
4月中ばから末までは有給休暇を、5月末までは病気休暇(有給だったかな?)、6月〜11月の半年間を病気休職(無給)に当てました。この間も案件に携わる方からチョイチョイご連絡をいただき、簡易回答を何度かしたように思います。まあSEOのトレンドだとか、そういったもの。ツラい治療中でも気を紛らわせられたのはありがたかったです。
退院後の復職に向けて
退院直後でも体力が無尽蔵
退院した後、勤務先の人事や上司から、「職場への復帰目安はいつなの?」と何度も確認が入りました。
結論、復職目安なんてそんな簡単に立てられるものではない、と思います。というのも、病院側から「仕事はこのくらいに復帰できるよ」と言われるわけではないですし、治療が始まると副作用で一日中倒れ込むことだってあったからです。
とはいえ、胃全摘の手術を経て、退院した直後のわたしは「やっぱわたしは無尽蔵の体力の持ち主だな!ワハハ!」と思えるほど動き回っていました。お子サマーに手を引っ張られ、商業施設を何kmも歩き回ったり。体重も術後2kgほどしか減らず、不思議と元気に動けていました。
職場復帰のスケジュールが読めない…
そんな生活は、点滴の抗がん剤を打った後から様変わりしました。
白血球と好中球の値が極端に落ち込み、主治医に「入院を考えた」といわれるほどに。一日中体調が悪く、生ける屍状態です。抗がん剤の副作用は、点滴薬にしても錠剤にしても個人差が大きく、試さないことにはわかりません。だから会社の人事や上司に「○月までには復職できる」という話がしにくかったんですよね。
治療方針が確定しないことには、復職スケジュールも決められないと、わたしは考えていました。利益追求するビジネス社会と、人間の健康を守る病院社会。このふたつは、どうも噛み合わないように見えます。
身体の病気で復職した人が少ない環境らしい
ちなみに私の場合、会社規定で病気休職期間は6ヶ月と決められていました。そこに有給をぶつけて、7ヶ月半ほどお休みをいただきました。主治医に相談して治療方針を確定させ、人事や上司、産業医を踏まえてミーティングをこなし、なんとか復帰へとコマを進めたのです。
聞くところによると、わたしの勤め先は、身体の病気で休職したケースは少ないそうで。人事や上司は、いろいろと調整に走ってくださったろうなぁ。ありがたいことです。
一方、勤め先には、がんなど内臓や身体の治療で入院・治療したケースが少ないと、途中で知りました。そりゃあ「手術→退院→ソッコーで復職って発想になるんだろうなぁ。治療もあるし、副作用の知識もストックが少ないだろうし、これは理解しにくいよなぁ」と思いました。
なので、病人側が主導権を握り、時には強くアプローチした方がよいこともあるみたいです。
復職すると決めたのは自分、だけど…
2023年12月、わたしは時短勤務で勤務先に復職しました。
ここまでの間、いろいろと考えました。それは、性に合っていた案件が終わったこと、別案件にJOINしても治療のため休みがちであろうこと、病を抱えて無理して働けない可能性…
そんなことを考えては、
- 勤務先に復職する
- 転職を検討する
- フリーランスになる
を検討した方がよいのでは?と思ったのです。
しかし2の「転職を検討する」にしても、体の調子を心配されて御祈りメールが届くことが想像できたし、3の「フリーランスになる」なんてもっとハードルが高そうに見えて。それで、福利厚生の整った1の「勤務先に復職する」を選ぶことにしました。
消極的な選択に見えるかもしれません。でも、まずは社会復帰すること、そして制度として休みを与えてくれた会社に貢献しなければという思いもあったことを、ここに記しておきます。
仕事の連絡にモヤモヤ… それは「葛藤」だった
連絡を受けてモヤモヤ…
スキルス胃がんの入退院、抗がん剤治療、そして復職。この間を通じて、いろんな方からさまざまなご連絡をいただきました。今回はお仕事にまつわる記事なので、ここで触れる連絡もお仕事関連に絞ります。
中でも、数年前から入院直前まで対応していた案件は年単位したし、稼働時間100%・基本常駐という環境でした。なので、お仕事を通じて外部連携を深め合った方々も多くいらっしゃいました。
そんな背景もあってか、案件から撤退した後も、
「この件、通りました!」
「こんな状況ですが、どうすれば〜」
などとご連絡をいただくことも、正直多かったです。もちろん、ドタバタの中でも後任をお伝えしたと思うのですが、なんとなく私のところに連絡をいただいていたんですよね。
ある日、発狂した
このような外部の方々からのご連絡は、病気で精神的に参っていたわたしのメンタル健全化に役立っていました。しかし同時に、なんとなくモヤモヤとしたものも抱えていたのです。このモヤモヤの正体を明確に表現できず、この後も長らく抱え続けることになります。
そのうち、メンタル健全化とモヤモヤの比率が逆転し、案件の連絡を受け取るだけで「キエエエエエエエエ!!!!!」と発狂しまして。もはやメンタル健全化どころではありませんwwwww
それで投稿したのが、このツイートです。あえてわかりやすいよう、ツイッタランドに投稿しました。
某案件に入る方から連絡が。元同僚だからって 「いろいろ教えて」と言われても😂ネットも会社も一年ブランクあるとわからんて😂無理無理😂
…みたいな。
DMもろて、心が落ち着かない感じ。でも会社員を選んだのはわたしだから前に進まんと。この状況でフリーランス絶対無理🥺
はーーー胃がんfxxk!😢
— ユッキー@毎日ビール|ブロガー (@yukipod) March 2, 2024
その後もモヤモヤ&発狂を引きずって、こんなツリー投稿もしました。
一晩経過してもモヤるくらい心残りなのだな、と思う朝です。おはよう、世界。
病気でやりたいこと・続けたいことができなくなるのが、めちゃくちゃ悔しい。
だからこそ早期発見・早期治療は必要なのです。これ、がんに限らず、どの病気でも同じことが言えるんじゃないかな。…— ユッキー@毎日ビール|ブロガー (@yukipod) March 2, 2024
発狂時の頭の中
まとめると、こんな気持ちだったんですよね。
- 案件を離れて1年だし、状況なんてわかるはずないよ
- 案件に知人がスポッと収まったのは、とてもよいこと!
- 考えれば考えるほど、わたしはあの案件から離れたくなかったんだなぁ
- 病気にならなければ、好きに働けた可能性があるのに…
- もっと早く見つけていたなら、治療に時間を割くことなく可能性を広げられたのに…
- そんなわたしの気持ちも知らずに、気軽に「教えて」と言われても、精神的負担しかない
- マジで、スキルス胃がんfxxk!!!!!!
いま振り返っても、とっても複雑〜。笑
それが「葛藤」とわかった
後日。
こんな話を持ちかけた相手から「葛藤を抱えていたんですね」と言われてハッとしました。ああ、これが葛藤というものなのか。そうか。そうだな。これ以上相応しい言葉が見つからないってくらいに、葛藤してきたわ。
どのくらいの状況だったか説明すると、大好きだった案件なのにアウトプットを一切目にしたくないほど、ひどく混乱しました。目にすると発狂しそうで、落ち着くまでしばらく距離を取ることにしたのです。あれだけお世話になったのに、いろんなものをミュートして、入居しているビル近くを避けて歩きました。
社員の方が個人レベルで普通に連絡をしてくださる分には、全然平気。
でも、企業色が強かったり、案件そのものだったりだと、どうしてもツラくて。楽しかった日々を思い出しちゃうし、わたしが関われていない現状が悔しくてツラい。病気で前に進められないのも苦しいし、精神的に病んで散々な気持ちでした。
病気を通じて様々な経験をしました。その中で、こんなに激しい葛藤に見舞われるなんて。わたし自身もびっくりなほど、深く傷を負ったようです。
関係者各位へ陳謝したい
関係者の皆さん、元クライアントの皆さん。わたしの病気をとても心配してくださっていたのに、本当にごめんなさい。すべてはわたしの心が弱く、余裕がないことが原因です。
ずっと上記の心情を隠してきました。でも、もう大丈夫です。葛藤は消し去れませんが、間違いなく少しずつ前に進めています。その証拠に、この記事を落ち着いて書き上げました。だからもう、きっと大丈夫。
こんなこと書いておいてアレですが、どこかでわたしを見かけたらフツーに話しかけて、乾杯でもしてやってください。もしかすると、わたしは泣きながら「案件、続けたかったッス」と酒を煽って泥酔するかもしれません。
でも、一度くらいはどうか許してください。それくらい皆さんとのお仕事が楽しくて仕方なかったのです。20年近くサラリーマンしてきましたが、最も楽しい時間でした。これは嘘偽りない気持ちです。
ひとつ言えることは、クライアントさんにはとても感謝しているのです。
ある日、泉崎で4人で飲んだことがあり、その時に検査をしに行こうと思い、病を見つけられました。あの時のやりとりが背中を押してくれたのは間違いありません。あれがなければ、いまごろわたしは焼かれて骨壷に収められていたかもしれないのです。
ほんとうに、ありがとうございました。なのに、ほんとうに、ごめんなさい。
これからについて
この記事を書くことにしたのは、新年度が始まったから。心機一転するためにも、病気を抱えたチンケな人間の葛藤を、書き残してネットの海に放流しようと思いました。
1年かけて育ててしまった「葛藤」。自分の性格を考えると、おそらく生涯消えることはないでしょう。病気で挫折を味わったわけです。言葉は汚いけれども、スキルス胃がんに対してFxxkくらい思って当然です。好きでなったわけではないし、病気なんていつ発症するかわかるはずもなく、いつも寝耳に水です。くっそ!めちゃくちゃ悔しい!
残り何年生きられるかわかりませんけれども、この先、やりたいことをやって生きたいです。推し活のためには、安定収入を得なければなりません。お仕事も推し事も両立させなアカン…
それに、こんな体になってしまいましたから、少しでも健康でいるために食べ物にも配慮が必要です。高タンパクを意識しています。胃全摘したためカルシウムやビタミンB12を吸収しにくくなってしまい、それを補完する薬が増えました。ヘドバンしながら、ワーキャーとライブを楽しみたいから、体力もつけないと。
自分のやりたいこと、大事なことをするための収入源として、仕事はある程度の割り切りが大事なのだと学びました。その中でいかに楽しみ、経験を増していくのか。これはもう少し、治療と体調が安定してから考えていきたいですね。
まあ、なんでしょう。いろいろ考えても、やっぱり早期発見・早期治療に勝るものはないのです。わたしの病気もステージⅠとかⅡで見つけて胃全摘すれば、点滴薬の抗がん剤治療で健全な細胞もぶっ倒すことなく、早く復職できたはずです。人生とはなんと先読みできないものか。日々、身をもって体感しております。
終わり。